過日の法人総会において今年度の事業計画は承認され、現場はその計画に基づいて事業を進めていくこととなります。こころは設立以来、常に一歩一歩着実な歩みを続けています。そして、今年度は、さらに大きな一歩を踏み出すこととなります。それは、当事者の方々をピアスタッフとして雇用し、ともに活動をしていくことです。
そこで、ピアスタッフ雇用について少しお話をさせていただきます。従来、福祉の現場では、基本的に「支援するーされる」関係の中で、障害のある人たちは、あくまでも「支援される人」として位置付けられてきました。
しかし、「支援する」側とされている病気や障害のない人たちにとって病気や障害は、机上で学んだ知識や実践での経験の中で間接的に知っているにすぎません。やはり、病気や障害の苦しみやつらさ、またそこから得ていくものは、当事者自身にしかわかりません。そして、当事者同士だからこそ実感を持って理解しあえることになります。支援者といわれる人たちが最後の最後で分かり合えない大きな壁を、いとも簡単に超えることができるのは、まさに当事者同士だからこそです。つまり、今福祉の現場では、その当事者という専門性が強く求められているのです。
では、単に当事者を雇用すればいいのかというと、そうではありません。そこには、ピアスタッフとしてのその専門性の学びが不可欠です。当法人で雇用するピアスタッフは、その研修を修了した人たちとなります。また、ピアスタッフとして働くということは、自らの病気や障害の様々な経験を、いわば財産として、武器として活動してくいことですから、自らがどう生きていくか、その生き方を問い続ける仕事になります。
さらに、このようなプロセスを経て、ピアスタッフとして雇用されるのは県内では初めてとなります。こころでの取り組みが、今後のピアの皆さんの活動を広げるきっかけになることを願いつつ、今年度も、多くの様々な人たちとの力を結集させて、力強く歩んで行きたいと思います。今年度もぜひ一緒に取り組んでいただければ幸いです。
理事長 菅原小夜子